出会い その2

 

出会い その2

用具を変えて気分一新しようと、西宮北口にあるスポーツ用品店に
ラバーを買いに行きました。

分厚いラバーに貼り変えてもらって、帰ろうとしていたときです。

店主のおじさんが、

「あんた、(卓球の)戦型は何や?」
「カットマンです」
「カットマンやて?あかん、あかん。こんな分厚いラバー使っとったら、
弾みすぎてカットが出来ん。こっちのラバーにしとき」

と言ってきました。


随分とお節介なおじさんやなーと、とまどっていると、

「あんた、本当に強うなりたいんか?」
「えぇ、まあ・・・」
「本当に本気で強うなりたいと思っているんか?」
「・・・そ、そうですね」
「はっきりせい!強うなりたいと心の底から本当に思っているのか?」
「・・・はい!」
「そうか、分かった。ほんなら、オレの言う通りにせい。
オレの言う通りにしたら、あんたでも絶対に強うなる!」
「ホンマですか?」

このお節介なスポーツ用品店のおじさんが、高校時代の出会いの二人目の
人です。そして私の最初のお師匠さんでもあります。大正生まれで戦争を
経験し、剣道が専門ですがあらゆるスポーツをやってきたそうです。

卓球は聞きかじり程度だそうですが、アドバイスは的確でした。
卓球ばかりをやってきたのではなくて、色々なスポーツをやってきた経験
からものを言うので、逆に多くの真実が含まれていることが当時の私にも
分かりました。

よく言われたのは、

「スポーツする身体を作ってから卓球をやらなあかん。
卓球を小手先のスポーツやと思うたら大間違いや。
卓球の選手はひょろっとしたヤツが多い。
だから少し上手くなったときに故障すんねん」

「ボールがスローモーに見える時があんねん。
それがものごっつう(ものすごく)大事や。
スローモーに見えてみい。どんなボールでも捕れるでぇ」

「試合の8割は精神力や。カッカしたり、シュンとしてたりすると、
10ある実力が1や2になるねん。相手がそういう状態のときに、
自分が10出せば勝てるワケや。そやろ?」

「学生の本分は勉強や。勉強もせんと好きなことばっかりやっとる
ヤツはロクな大人にならん」

などなど・・・。

すみません、ロクな大人じゃありません(笑)。

それからというもの、私はそのスポーツ用品店にしょっちゅう顔を
出すようになり、色々なことを教わりました。


スポーツに共通するグリップのこと、動体視力の鍛え方、フォームにおける
腰の入れ方、日常生活におけるトレーニングの方法、スポーツと精神力につ
いて、試合の駆け引きに至るまで、実に多くのことを、この師匠から教わり
ました。

そして私は師匠のアドバイスを忠実に実行し、西宮市内大会で準優勝したの
です。

屈辱の1回戦負けから、ちょうど1年後のことでした。

ドラマだったら、ここで「めでたし、めでたし」で終わるンですが(笑)。
人生はドラマではないですからねー。まだまだ続きます。

 

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