<「いきなり卓球部顧問」の方へ その5>(2006/06/06)

このテーマのシリーズで、色々な卓球部顧問の方を紹介してきましたが、今号で最後です。

OBUは静岡市卓球連盟の役員をしていまして、大会進行のお手伝いをさせて頂いております。

そんな中で、たまに、とても興味深い出来事に出会うことがあります。
今号は、それを紹介したいと思います。

昨年に行われた、ある中学生の団体戦の試合の出来事でした。

決勝は第一シードのA中学と、第三シードのB中学の対戦となりました。

A中学はレギュラー全員がスポーツ少年団(以下スポ少)出身で、
ペンやシェークのドライブ型、速攻型が主体のチームでした。

選手はみんな小学校から卓球に慣れ親しんでいるだけあって、
大人の目から見ても、「なかなかやるなー」というレベルでした。
他の中学校との実力差は明確で、決勝進出は「実力通り」と思えました。

一方、B中学の選手は、ツブ高ショートマンを主体としたチームでした。
2人カットマンがいたのですが、2人共バックにツブ高を貼っていました。
つまり、全員がツブ高ラバーを使った選手だったのです!

これには私も驚きました。
普通は、チームには裏ソフトを使用した選手が数名いるものですが、
全く裏ソフトの選手がおらず、全員がツブ高ラバー使用者とは!

後で分かったのですが ・・・、
これは、B中学顧問のY先生の「したたかな戦略だった」のでス。


注)ツブ高ラバー
    表ソフトのツブの高いラバーのこと。
    こちらが送ったボールの逆の回転で返って来る「あまのじゃく」ラバー。
    使いこなすのは難しいが、クセ球が出るので、相手にとってはやり難いラバーである。
    バックナンバー(31号 2005/9/24:ツブ高ラバー対策)も見てね!
       http://blog.mag2.com/m/log/0000147448


・・・・・
決勝の試合が始まりました。

1番からダブルスを含む5番まで、どの試合も接戦で、フルセットにもつれ込む試合でした。

序盤は、A中学の選手が圧倒的な攻撃力を活かして先制するのですが、
中盤からB中学の選手が慣れてきてそのセットをモノにします。
そして終盤は、一進一退を繰り返し、A中学の選手がそのまま押し切るか、
B中学の選手がひっくり返すか・・・。大概は、そんな試合の流れでした。

B中学の選手は、ツブ高ショートマンか、ツブ高カットマンなので、
セットを取る時は、自ら攻撃して取ったというより、相手のミスで取った
印象を受けます。

つまり、A中学の選手の攻撃が立て続けに決まれば、そのセットを取るし、
攻撃をミスすれば、B中学の選手が取る、といった感じなのです。
入れば勝ち、入らなければ負け。勝敗はA中学の選手次第でした。

決勝戦は独特の雰囲気があります。

試合をやっているのは自分達だけだし、普段は気にしていなかった他人が
自分達の試合に注目している。時にはプレーについて批評している声が
聞こえたりする。

「見られている」

これは、かなりのプレッシャーになりますよねー。卓球の試合に限らず。

そんな中で、A中学の選手は、打ち続けなくてはなりません。
1試合を通じて、打ったボールが全て決まるのは、余程の実力差がないと
ありえません。だんだん入らなくなって来ます。

B中学の選手にも、同じプレッシャーがかかっているのですが、
先に攻撃を仕掛けるというリスクを負う分、A中学の選手の方が
キツイですね。

一度迷い始めると、もがけばもがくほどハマっていく ・・・
そんな蟻地獄のようなB中学の戦術でした。

試合進行の関係でシングルス4本を先にこなし、後はダブルスの試合のみ。
ここまで2-2のタイスコアで、全くの互角でした。

ダブルスもシングルスと同じで一進一退を繰り返していました。

試合のヤマ場に来て、ベンチからの応援(指示?)は対照的でした。

A中学のコーチは
   「もっとこうしろ、ああしなくてはダメだ!」
という技術的なものでした。

一方、B中学のY先生は、一言、
   「プラス思考で行け!」
でした。

ハタから見ていると、どっちが勝ってもおかしくない内容でしたが、
最後に勝利を手にしたのは ・・・





B中学の方でした。


王者A中学敗れたり ・・・  の瞬間でした。




優勝したB中学は、勝った瞬間、キャーキャー言って、喜びを爆発させて
いました。中には感極まって泣いている子もいましたネ。(^^)
これって、団体戦の最高の瞬間ですね。

OBUは中学校の団体戦って、面白いなーって思いました。(^^;

Y先生にとっては「してやったり」でしょうねー。(笑)

顧問(コーチ)の仕事って、苦労が多くてなかなか結果に結びつかないけれども、
Y先生のように強い学校に勝つという目標をクリアすることで、
生徒に自信と勇気と感動を与えることだって出来るのです。


やりがいのある仕事、ですね。(^-^)d


   シャキーン!(←効果音)
//-------------------/
   OBU’S EYE ★彡
/-------------------//       ← ここで出ました!(笑)
OBUは別にY先生とは面識もありませんし、B中学を応援していた
ワケではありません。(笑)

また「選手全員にツブ高ラバーを使用させる」ことを推奨しているワケでもありません。
誤解しないでね。(^^;

ただ、この出来事に関しては、学ぶべきものが沢山あると思たのでス。

ウワサで聞いた情報からOBUが推察したのですが、このY先生、
なかなかの「策士(戦略家)」ですよ!

こんな風に、戦力分析したのではないでしょうか。

「A中学の選手は、スポ少時代から卓球をやっている、
  謂わば「卓球の英才教育」を受けている選手。
  ところが、わがB中学の選手は、中学校から始めた後発選手。
  A中学と同じ土俵で戦っても、そもそもスタートが違うので不利だ。」

「そんなA中学に、中学3年間という限られた短い期間で勝つにはどうすれば良いか」


・・・・・
考えた挙句、採用した戦術が「全員ツブ高ラバー」という奇策だったのでは、ないでしょうか。


A中学の選手のような裏ソフト使用者にとってやりにくいだけでなく、
練習する技術が絞られるのです。

ツブ高ショートマンの練習は、ひたすらツッツキとショートです。
たまにフォア側に来たボールを角度打ちします。
後は、ただひたすらツッツキとショート、ツッツキとショート、ツッツキとショート・・・・

試合で最も使うワザに対して、練習時間の大半を費やしているのです。
中学から始めた後発選手がやるには、最も効率の良い練習方法ですよね。
      ↑  コレ、とっても重要な考え方です。

故荻村伊智朗さんも言っています。
  少ない練習量で効果を上げるには、プレーの単純化を深く突っ込めと。

そして、もう一つはカットマン2人を育てていること。
チームにカットマンが2人くらいいると、団体戦のオーダーを組む時に
幅が出来ます。  ←  コレも重要!

攻撃選手に滅法強い相手のエースが、カットマンに弱いケースはよくあります。
たとえ勝てなくてもエースのリズムを狂わすことが期待できます。
カットマンは団体戦で「刺客」の役割を果たすことがあるのです。

長年カットマンをやっているOBUの目から見て、この2人のカットマン、
かなり練習をしている印象を受けました。「位置取り」が上手いからです。

「位置取り」が上手いとは、相手が打って来るコースの範囲を読んで、
その中心にいる様に、あらかじめ動いている、ということです。
一口に言うと、読みがいいワケです。

カット自体は綺麗なフォームではなかったのですが、ツブ高面を上手く
利用して「とにかくよく返球する」のです。よく鍛えられていました。

これらは、多球練習とフットワーク練習を沢山やっていないと
なかなか覚えられないこと
です。陰で練習をやり込んだはずです。


卓球をよく知り、研究すること。
勝つための戦略、戦術を立てること。
限られた時間内で努力して結果に結びつけること。

Y先生は、それらを実行したのだと思います。

そして極めつけは、あのアドバイス。

   「プラス思考で行け!」

緊張した場面で、選手にとっては勇気付けられる一言だったと思います。



・・・・・
こんな顧問の先生も、いるのですね!うーむ。



2010.06.24 00:00 | Comments(0) | Trackback(0)


TOP
<<2010年06月>>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    

最近の記事

カテゴリー

月間アーカイブス

最近のコメント